みなさん、こんにちは!
タングステンです。
近年、というか1990年代後半あたりから日本におけるAT車の普及率が大幅に上がっています。初めからMT仕様がラインナップされていない車種も少なくないですよね。
その証拠か、AT限定免許を取得する人の割合がかなり高まっているみたいです。
現代において、選択肢そのものが狭まっているMT車に乗るための免許をわざわざ取ろうと考える人は減っているのでしょう。
とはいえ、MT車が絶滅した訳ではありません。
街を見渡せば数多く走っているAT車のなかにMT車がいるはずです。
もし、そのMT車に乗らなければならなくなってしまったら、あなたはどうしますか?
今回はAT限定免許しか持っていない方がMT車に乗る方法の一つである「AT限定解除教習」について、筆者の経験を交えつつ書いていきます。
社用車はMT、所持免許はAT限定 こんなときどうする?
自分のこととして考えてみてください。
あなたはこの春、学校を卒業して就職をします。卒業式を終えた今、入社まで残り2週間となりました。
さて、今日は就職する会社で所属予定の部署長との面談があります。入社直前のちょっとした顔合わせです。これからあなたの上司になる人との初顔合わせに緊張しつつ、約束の時間に遅れないよう面談に向かいます。
面談では初対面時の挨拶もそこそこに、出勤初日の日程や今後のスケジュールに関する説明がありました。諸々説明された後、上司がこんなことを言いました。
「業務で車の運転をしてもらうこともあるけど免許はあるから心配ないね。あ、ちなみにウチの社用車マニュアルのやつもあるんだけど、マニュアル車の運転も大丈夫だよね?」
確かにあなたは学生の時分、教習所に通って車の免許を取得しています。
ですが、その免許はAT限定でした。
そう、あなたが所持しているのはオートマチックトランスミッションの四輪車のみを運転することができる免許であり、マニュアルトランスミッションの四輪車は運転ができないのです。
にも関わらず、上司からは「マニュアル車の運転できるよね?」と言われてしまいました。
まあ運転できませんよね。
HAHAHA!!!
…と笑っている訳にもいきません。何か手を打つ必要があります。
手始めに「実はAT限定の免許しか持っていないんです」と正直に伝えるのもいいでしょう。上司がどう返答してくるかはわかりませんが、何かしらの措置をとってくれるかもしれません。
問題はその後です。
救済措置があるにしろないにしろ、最終的にはマニュアル車の運転ができることを期待されるでしょう。
もしかすると、上司からこんなことを言われるかもしれません。
「会社から費用は支給するからAT限定の解除してきたらどう?」
…解除?
AT限定の解除って何だ?
「AT限定解除教習」とは?
さて、話題にあがりましたAT限定の解除ですが、そんなことができるのでしょうか?
結論から申しますと、できます!
AT限定解除とは、AT車だけではなくMT車の運転もできるように所持免許の制限を解除すること、およびその手続きのことです。
限定解除の方法はいくつかありますが、取り組みやすさ等をひっくるめて一番現実的なのが「AT限定解除教習」です。
「AT限定解除教習」は、免許の「運転できるのはAT車のみ」という制限を取り払うための教習です。教習は各地にある自動車教習所で実施されています。
決められた時間の講習を受けた後、場内審査に合格すると合格証明書が発行されます。発行された証明書を居住都道府県の運転免許センターに持って行き、必要な手続きを済ませましょう。
手続きが終われば、AT限定解除完了です!
つまるところ「教習~免許センターでの手続き」までの一連の流れをクリアしてしまえば、MT車の運転もできるようになるんですよ。
これで何の心配もなく社用車を運転することもできるという訳です。
教習期間・費用の目安
「AT限定解除教習」を受けることでAT限定で免許を取った人でもMT車の運転ができるようになることはわかりましたね。
次はこの教習のもっと具体的な部分として、教習にかかる時間とお金のことを書いていきます。
まず、教習にかかる時間ですが、ものすごく短いです。ここに最短で教習を済ませた場合の時間をまとめてみました。
教習時間:2日(2時間×2回)
場内審査:1日計:3日
教習開始前の申込や審査合格後に免許センターに行く日を含めるともう何日か必要になりますが、それらを含めても1週間あれば限定解除はできてしまいます。
あとは教習予約をスムーズに取れるか次第ですね。
続いてお金の話をしましょう。
「AT限定解除教習」にかかる費用は教習所ごとに異なるので一概には言えませんが、4万~8万円くらいが相場ですかね。
参考になるかはわかりませんが、筆者が教習を受けた際に支払った教習料金は57,000円でした。ちなみに、この料金には入所申込金、教本代・教材費・写真代などの諸費用一式・基本時限の技能教習料・検定料が含まれています。
偶然ではありますが、教習料金相場の中央値ニアピンくらいになっていますね。
この教習料金以外には、免許センターで手続きをするときに手数料1,400円が別途必要になってきます。
詳しい教習料金はお住まいの地域の教習所に問い合わせれば教えてもらえると思います。もしお住まいの地域に複数の教習所があるなら、料金を比較するのも良いでしょう。
また、教習所によっては独自の割引制度を設けているところもあるようです。例えば、教習所のホームページ内の申込フォームから入所申込をすれば割引が適用されるとか、その教習所の卒業生の紹介で入所すればキャッシュバックを受けられるとか。
教習所独自の制度を活用することで少しでもお得に教習が受けられるならそれに越したことはないですよね?
AT限定解除を検討していて教習に興味がある方は、キチンと調べてから教習所を選んでくださいね。
教習を受けて、実際のところどうなの?
先の内容を読んだ方は「AT限定解除教習」がどんな教習なのか大体掴めたのではないかと思います。
「教習短い割に値段高いな」とか。筆者も割高だなって思います。
それはさておき、他にも気になることがありますよね?
気になるのは“実際どうなのか”という部分ではないですか?
「短期間の教習で合格できる?」
「半クラッチの感覚掴めた?」
「教習中どこで苦戦した?」
などなど。教習を受けた人の話を参考にしたいと思う人も多いでしょう。
筆者も教習を受ける前にいろいろと読みましたからね。
というわけで、ここからは「AT限定解除教習」を実際に受けた筆者の体験レポートをまとめていきます。
コースの攻略はラクラク
短時間の教習に身構えていましたが、所内の走行は難なくこなせました。
MT車に乗るのは初めてとはいえ、四輪車の免許取得からそれなりの年月が経っていますからね。走らせるだけなら問題なくできますよ。
そのためか、S字・クランクや踏切通過、指示速度といった教習コースの課題に苦戦することはなかったです。
クリアするだけなら坂道発進・方向転換もヨシ!
(歯切れの悪さは後述を読めばわかります)
一時停止や信号機のある交差点、その他諸々の道路標識など、交通ルールに従った走行も自然にできました。まあ、前から免許持っていますし、普段から四輪・二輪の両方を運転しているので、できないと問題ありですよね。
半クラッチとアクセルワークに大苦戦
苦戦を強いられたのはMT車特有の操作です。
半クラッチの具合がわからない!!!
一応、大型自動二輪免許持ちで普段からバイクに乗っているので、マニュアルトランスミッションやクラッチがどういうものなのかを人並みには理解しているつもりです。
…つもりですが、だからといってできる訳ではないんです!
頭で理解できても、身体が操作を覚えないんですよ。
そして、半クラッチと同じくらいアクセルワークにも苦戦しました。
どのくらいアクセルを踏んで、どのくらいの回転数に合わせるのが良いか。これがなかなかわからないんです。
また、筆者は回転数を一定に保つというのが苦手みたいで、特に発進時のアクセル開度調整が上手くできませんでした。
半クラッチとアクセルワークに苦戦を強いられた結果、発進のスムーズさにムラが出ちゃうんです。上手くできるときは自分でも不思議なくらいスムーズに発進できるんですよね。
逆にダメなときはガックンガックンです。酷いときはエンストまでする始末。
エンストを恐れて発進すると空ぶかし。
空ぶかしを恐れて発進するとガックンガックン。
S字・クランクなどの徐行が必要な場面では断続クラッチが必須ですが、クラッチ感覚で苦戦を強いられているのでなかなか上手くいきません。
「MT車特有の機構に慣れるなら練習あるのみ」と言いたいところですが、AT限定解除教習の教習時限数は4時間しかない。
4時間で慣れろというのは少々酷な話だと思いません?
頑張ってみましたが、筆者は最後まで上手くできませんでした。
運転慣れから来る油断に気づく
今回受けた教習はAT限定解除のためのもの。
筆者に関して言えば、四輪の免許を取得してからある程度の年月が経ってからの限定解除に臨んでいます。
つまるところ、公道走行に慣れた状態で教習所に行ったんですよね。
だからこそ、気づかされたことがたくさんありました。
その最たるものが運転慣れしたことで身についてしまった悪癖です。
今回の教習中、幾度となく指摘を受けることとなりました。
指摘内容はいくつかありましたが、もっとも多く指摘を頂いたのはステアリングの逆手持ちでした。教官から言われて初めて自分が逆手持ちをしていることに気づきましたね。
免許を取って何年か経ってから教習所に通うことなんてなかなかないですから、こうやって自身の運転について指摘をしてもらえるのはありがたいですよ。
限定解除云々はもちろんですが、自身の運転を省みることができたのが良かったです。AT限定解除教習を受けたから得られたものかもしれません。
審査合格後、教習難易度について考える
ここまで読んでもらった通り、思いのほか苦戦した教習だったんですよ。
まあ、落ちることなくストレートで審査に合格したんですけどね。
何故合格できたのか、審査から1ヶ月以上経った今もわかりません。空ぶかしも多かったですし、半クラッチが上手くいかずギクシャクした発進をしていましたからね。
正直「落ちたかな…」と思っていたので、サラリと合格を告げられたときは嬉しさ半分驚き半分でした。
何はともあれ、これで晴れて公道でMT車の運転ができるようになりました。
ただ、クラッチ操作に難ありな今の状態で公道走行をするのはかなり不安。できればもっと練習を積みたいところです。
もっと言うなら、MT車の操作に慣れるための練習車が欲しい。具体的には、スズキの2代目スイフトスポーツ(ZC31S)が欲しいですね。
(本当のことを言えば、シビック TypeR・EK9がいいんですけど中古相場がエラいことになってるんで無理ですね…)
それはさておき、4時間の教習を受けて審査をパスした今、色々と思うところがあるんです。
AT限定解除教習の難易度についてですよ。
あくまでも筆者個人の体感になりますが、この教習の難易度は決して低くないですね。
先述している通り、教習時間が短いため審査に向けた練習があまりできません。車両感覚を掴む、コースを理解する等の“慣れ”によってカバーできる不安材料を消しきれないんですよ。
普段からAT車を運転されている方なら車両感覚は問題ないでしょう。車の運転そのものに慣れていればコースを理解せずとも走行はできると思います。
でも、マニュアルトランスミッションならではの操作に慣れるのはなかなか厳しいでしょう。余程才能がある人は別ですが、ちょっと触っただけでクラッチの感覚を掴むなんて芸当はまずできません。
クラッチの感覚を掴めずアタフタした人の典型例が筆者ですしね。
筆者は運よく(実力でと言いたいところですが…)規定教習時間でみきわめをもらい、一度の審査で合格することができましたが、みきわめまでに規定以上の教習時間を要したり、何度か審査を受けたりすることは十分あり得るでしょうね。
ま、合格できないものではありませんので、苦戦を強いられたとしても気長に頑張りましょう。
仕事で必要な方はもちろん、趣味で取るのもイイんじゃない
今回は「AT限定解除教習」について、実際に受けてきた経験も交えつつまとめました。
記事前半では起こり得るシチュエーションとして「社用車がMT車なのに所持免許はAT限定でどうしよう!」というものを挙げてみました。同じような境遇になって悩んでいる方の一助となれたでしょうか?
もちろん、MTスポーツカーに乗りたいと思うようになったから限定解除を検討し始めたという方もいるでしょう。何を隠そう筆者がそうですからね。今すぐは難しそうですが、将来的にMTスポーツカーに乗りたい。だから今のうちに免許だけは取っておこうと思ったんです。
どちらにしても「AT限定解除教習」がどんな感じなのか、短時間の教習で大丈夫なのか、などの疑問を解決する取っ掛かりくらいにはなれたかなと思います。
仕事で必要な方も、趣味が高じて必要になった方も、機会がありましたら是非「AT限定解除教習」を受けてみてくださいね!
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